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2026.07.09 障害者雇用×親なきあと

障害者雇用における家族支援|企業の取り組み事例と職場定着の連携方法

障害者雇用において、従業員が長く安心して働き続けるためには、職場での配慮だけでなく、日々の暮らしを支える家族との連携も大切になります。

障害のある方にとって、家族は生活リズムや体調管理、通院、金銭面、困ったときの相談など、職場からは見えにくい部分を支えている存在であることが少なくありません。

一方で、企業が家族とどのように関わるべきかについては、慎重な判断が求められます。本人のプライバシーを守ること、家族の不安によりそうこと、企業として関われる範囲を明確にすること。そのバランスに悩む企業も多いのではないでしょうか。

この記事では、障害のある従業員の職場定着を支えるために、企業ができる家族支援の考え方や、具体的な取り組み、外部支援機関との連携方法について整理します。

なぜ今、障害のある従業員の「家族支援」が職場定着に重要なのか

障害のある従業員にとって、家族は日々の暮らしを支える最も身近な存在です。

家族が職場の状況を理解し、本人がどのような環境で働いているのかを知っていることは、本人の安心にもつながります。また、家族が会社に対して安心感を持てることで、本人の就労を前向きに支えやすくなります。

企業にとっても、家族との良好な関係は、本人の小さな変化に早く気づくための大切な手がかりになります。

たとえば、家庭での生活リズムの乱れ、体調の変化、服薬や通院の状況、家族の介護負担などは、勤怠や仕事への集中力に影響することがあります。職場だけを見ていても分からない背景を、必要な範囲で共有できる関係があると、早めの対応につなげやすくなります。

もちろん、企業が家庭に踏み込みすぎる必要はありません。

大切なのは、本人の同意とプライバシーへの配慮を前提に、本人・家族・企業がそれぞれの立場を尊重しながら、安心して働き続けられる環境を一緒に整えていくことです。

企業が直面する、家族連携における3つの課題

障害者雇用を進める中で、家族との連携が大切だと分かっていても、実際の現場では判断に迷う場面が多くあります。

特に、本人のプライバシーをどう守るか、家庭の状況にどこまで関わるか、緊急時にどう連絡するかは、多くの企業が悩みやすいポイントです。

ここでは、家族連携を進めるうえで企業が直面しやすい3つの課題を整理します。

課題1:本人のプライバシーと情報共有のバランス

家族との情報共有は、本人の職場定着を支えるうえで有効な場面があります。

一方で、本人の同意なく勤務状況や健康状態、職場での困りごとを家族に伝えることは、プライバシーの面で大きな問題になりかねません。

家族にとっては「会社での様子を知りたい」という思いがあり、企業としても「家庭でも協力してもらえたら」と感じる場面があります。しかし、本人の意思を置き去りにして情報共有を進めてしまうと、本人との信頼関係が損なわれる可能性があります。

そのため、どのような情報を、どのような場面で、誰に共有するのかを、あらかじめ本人と確認しておくことが大切です。

課題2:家庭の状況にどこまで踏み込んでよいか

遅刻や欠勤が増えた、仕事中に疲れが見える、身だしなみが以前と変わったなど、職場で気になる変化が見られることがあります。

その背景には、家庭での生活リズムの乱れ、家族の体調変化、通院や服薬の問題、金銭面の不安などがあるかもしれません。

ただし、企業が家庭の状況に過度に踏み込むことは避ける必要があります。本人にとっては、プライベートな領域に踏み込まれたと感じたり、会社に不信感を持ったりすることもあります。

企業としては、「家庭の問題を確認する」のではなく、「仕事を続けるうえで困っていることがないかを一緒に考える」という姿勢で関わることが大切です。

課題3:緊急時の連絡体制が明確でない

体調不良、無断欠勤、職場での急な不調、災害時など、緊急時に家族へ連絡が必要になる場面があります。

しかし、どのような場合に家族へ連絡するのか、誰が連絡するのか、本人が家族への連絡を希望していない場合はどうするのかなど、具体的なルールが決まっていない企業も少なくありません。

ルールが曖昧なままだと、対応が遅れたり、担当者によって判断が分かれたり、本人や家族との信頼関係に影響が出たりすることがあります。

いざというときに迷わないためにも、緊急時の連絡先や対応手順は、本人の同意を前提に、事前に整理しておくことが大切です。

障害のある従業員の家族を支える企業の取り組み事例

障害のある従業員の職場定着を支えるためには、家族が安心できる関係づくりも大切です。

家族が「本人はどのような環境で働いているのか」「会社はどのように見守ってくれているのか」を知ることで、本人の就労を支えやすくなります。

ここでは、企業が取り入れやすい家族支援の取り組み例を紹介します。

職場見学会や個別相談会の開催

家族にとって、本人がどのような場所で、どのような仕事をしているのかが見えることは、大きな安心につながります。

職場見学会では、実際の仕事場や休憩スペース、一緒に働く上司や同僚の様子を見てもらうことで、家族の不安を和らげることができます。

また、見学会にあわせて個別相談の時間を設けることも有効です。家族が日頃感じている不安や、家庭で気になっていることを聞くことで、会社としても本人をより理解しやすくなります。

ただし、本人の希望や気持ちを確認せずに家族を招くことは避ける必要があります。あくまで本人の同意を前提に、安心して参加できる形を整えることが大切です。

定期的な三者面談の実施

本人、家族、会社の担当者が定期的に顔を合わせる三者面談は、情報共有と相互理解を深めるうえで有効です。

面談では、会社から職場での様子や成長した点を伝え、家族からは家庭での過ごし方や体調の変化、気になっていることを共有してもらいます。

大切なのは、課題を指摘する場ではなく、本人が安心して働き続けるために、関係者が同じ方向を向く場にすることです。

面談の頻度は、本人の状況や家族の希望に応じて、3か月に一度、半年に一度など無理のない形で設定するとよいでしょう。

家族が相談できる窓口の設置

家族が「最近、本人の様子が少し気になる」「会社ではどのように過ごしているのか知りたい」と感じたときに、相談できる窓口があると安心です。

窓口を人事部、ダイバーシティ推進部門、障害者雇用の担当者などに一本化しておくことで、家族も相談先に迷いにくくなります。

一方で、相談があった場合でも、会社が本人の同意なく職場での詳細を家族に伝えることは避ける必要があります。

家族の不安に耳を傾けながらも、本人の意思とプライバシーを守る。その両方を大切にした運用が、信頼関係につながります。

社内の理解を深める情報発信

障害のある従業員が安心して働くためには、家族との連携だけでなく、職場全体の理解も欠かせません。

社内報やイントラネットなどを活用して、障害者雇用の取り組みや、働きやすい職場づくりに向けた工夫を発信することは、社内の理解促進につながります。

本人の個人情報やプライバシーに十分配慮しながら、会社として障害者雇用に前向きに取り組んでいる姿勢を伝えることは、家族にとっても安心材料になります。

「本人が会社の中で大切にされている」と家族が感じられることは、家庭からの支えにもつながります。

職場定着を支える家族連携の進め方

家族との連携は、必要なときだけ場当たり的に行うのではなく、会社として一定の流れを整えておくことが大切です。

入社時の確認、日常的な連絡ルール、緊急時の対応、個人情報の取り扱いをあらかじめ整理しておくことで、本人・家族・企業の間で安心感が生まれます。

ここでは、家族連携を進める基本的な流れを紹介します。

STEP1:本人の同意を得て、連携の範囲を明確にする

家族と連携するうえで、まず大切なのは本人の同意です。

入社時や配属時、または支援体制を見直すタイミングで、家族との連絡について本人と確認しておきます。

その際には、次のような点を具体的に整理します。

  • どのような場合に家族へ連絡するのか
  • 会社側の誰が連絡するのか
  • 家族の誰に連絡するのか
  • どのような内容を共有するのか
  • 本人が共有してほしくない情報は何か

これらを曖昧にせず、必要に応じて書面で確認しておくことで、本人のプライバシーを守りながら、必要な連携を行いやすくなります。

STEP2:定期連絡と緊急時対応のルールを決める

本人の同意を得たうえで、具体的な運用ルールを決めます。

定期的な連絡を行う場合は、電話、メール、面談などの方法や頻度を整理します。必要がなければ、定期連絡ではなく、面談時のみの情報共有でも構いません。

緊急時については、どのような状況で家族へ連絡するのかを明確にしておくことが重要です。

たとえば、本人と一定時間以上連絡が取れない場合、職場で体調不良が起きた場合、無断欠勤が続いた場合など、客観的な基準を設定しておくと、担当者が判断に迷いにくくなります。

本人、家族、会社側の関係者がルールを共有しておくことで、いざというときの対応がスムーズになります。

STEP3:共有する情報は必要最小限にする

本人の同意を得ている場合でも、家族に共有する情報は慎重に選ぶ必要があります。

伝えるべき情報は、本人の安全確保や就労継続に必要な範囲にとどめることが基本です。

業務評価の詳細、職場内の人間関係、本人が話してほしくないと感じている内容などは、本人の尊厳や信頼関係に関わるため、慎重に扱う必要があります。

家族との連携は、本人を管理するためではなく、本人が安心して働き続けるためのものです。その視点を忘れずに、情報共有のあり方を整えることが大切です。

企業と家族だけで抱え込まないための外部支援機関との連携

障害のある従業員の支援は、企業と家族だけですべてを担う必要はありません。

むしろ、生活面や医療面、福祉制度に関する課題は、専門的な支援機関と連携することで、本人にとっても、家族にとっても、企業にとっても負担が軽くなることがあります。

ここでは、企業が連携しやすい代表的な支援機関を紹介します。

障害者就業・生活支援センターの活用

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の就業面と生活面を一体的に支援する機関です。

勤怠の乱れや体調不良の背景に、生活リズム、金銭管理、家庭環境、福祉サービスの利用状況などが関係している場合、企業だけで対応するのは難しいことがあります。

そのようなとき、本人や家族の同意を得たうえで、障害者就業・生活支援センターに相談することで、専門的な視点から助言を受けることができます。

企業と家族の間に第三者が入ることで、感情的なすれ違いを防ぎ、本人にとって必要な支援を整理しやすくなります。

ジョブコーチとの情報共有

ジョブコーチは、障害のある方が職場に適応し、安定して働けるよう支援する専門職です。

業務の進め方、職場でのコミュニケーション、指示の出し方、環境調整などについて、本人と企業の双方に助言を行います。

ジョブコーチ支援を活用する場合は、本人、企業担当者、必要に応じて家族も含め、支援の方向性を共有することが大切です。

職場での課題と家庭での様子を無理のない範囲で共有することで、本人にとって一貫した支援につながります。

医療機関との連携

障害の特性や体調面の配慮については、医療機関からの助言が役立つことがあります。

特に、精神障害のある従業員の場合、体調の波やストレスの影響、業務量の調整、休職・復職の判断などについて、主治医や専門機関との連携が重要になる場面があります。

ただし、医療情報は非常に慎重に扱うべき情報です。

企業が医療機関と連携する場合は、本人の明確な同意を前提とし、必要な範囲に限って情報をやり取りすることが大切です。

障害のある家族をケアする従業員への両立支援

障害者雇用においては、障害のある従業員本人への支援が中心になります。

一方で、企業にはもう一つ、「障害のある家族を支えながら働く従業員」への支援という視点もあります。

障害のある子ども、きょうだい、配偶者、親などをケアしながら働く従業員は、通院の付き添い、学校や福祉サービスとの調整、行政手続き、急な体調変化への対応など、仕事以外の多くの役割を担っていることがあります。

仕事と家族のケアを両立できる環境を整えることは、従業員の離職を防ぎ、多様な人材が働き続けられる職場づくりにもつながります。

短時間勤務やテレワークなど柔軟な働き方

障害のある家族をケアする従業員にとって、時間の調整ができることは大きな支えになります。

通院の付き添い、福祉サービスの面談、学校との連絡、急な呼び出しなどに対応するためには、短時間勤務、テレワーク、フレックスタイム、時差出勤などの選択肢があると働き続けやすくなります。

制度を用意するだけでなく、利用しやすい雰囲気をつくることも大切です。

「制度はあるが使いづらい」という状態では、従業員は負担を抱えたまま働き続けることになってしまいます。

通院や手続きに対応できる休暇制度

障害のある家族を支える従業員には、半日単位や時間単位で休暇を取りたいというニーズがあります。

定期通院、リハビリ、福祉サービスの更新手続き、学校や支援機関との面談など、家族のケアに必要な予定は平日に入ることも少なくありません。

法定の休暇制度に加えて、会社独自の「ケア休暇」や「ファミリーサポート休暇」などを設けることは、従業員にとって心強い支援になります。

こうした制度は、従業員を大切にする会社の姿勢を示すことにもつながります。

公的な助成金や支援制度の活用

仕事と家族のケアを両立できる職場環境を整える際には、公的な助成金や支援制度を活用できる場合があります。

たとえば、介護離職の防止や両立支援に関する助成金は、企業が休暇制度や相談体制を整える際の後押しになることがあります。

制度の内容や要件は変更されることがあるため、実際に活用を検討する際は、厚生労働省や都道府県労働局、社会保険労務士などの専門家に確認することが大切です。

費用面の負担を抑えながら、従業員が働き続けやすい環境を整えることは、企業にとっても大きな意味があります。

障害のある従業員の家族支援に関するよくある質問

障害者雇用における家族支援では、人事担当者や現場の管理職から、プライバシーへの配慮や具体的な連携方法について多くの質問が寄せられます。

ここでは、実務で特に悩みやすいポイントを整理します。

障害のある従業員の家族と連絡を取る際、最も注意すべきことは何ですか?

最も大切なのは、本人の同意を得ることです。

家族であっても、本人の勤務状況や健康状態を、会社の判断だけで共有することは避ける必要があります。

連絡する場面、連絡先、共有する内容、会社側の担当者を事前に確認し、必要に応じて書面で残しておくと安心です。

家族との連携は、本人を支えるためのものです。本人の意思を尊重することが、信頼関係の土台になります。

職場定着に効果的な家族支援の取り組みはありますか?

本人、家族、会社の三者で定期的に面談する機会を設けることは、職場定着に有効な取り組みの一つです。

職場での様子と家庭での様子を共有することで、本人の変化に早めに気づきやすくなります。また、会社と家族が同じ方向を向いて支援しやすくなります。

ただし、面談は本人を評価したり、課題を一方的に伝えたりする場ではありません。本人が安心して働き続けるために、関係者が一緒に考える場として設計することが大切です。

家族との連携がうまくいかない場合、どこに相談すればよいですか?

まず相談先として考えられるのは、障害者就業・生活支援センターです。

就労面と生活面の両方について相談できるため、企業と家族の間で認識の違いがある場合や、生活面の課題が就労に影響している場合に、第三者として助言を受けることができます。

そのほか、本人が利用している相談支援専門員、就労移行支援事業所、グループホーム、医療機関なども、状況に応じた連携先になります。

企業だけで抱え込まず、本人を支える関係者とつながることが大切です。

まとめ|本人・家族・企業が安心してつながるために

障害者雇用における職場定着には、本人の努力や職場での配慮だけでなく、生活の基盤を支える家族との関係づくりも大切です。

家族が職場のことを理解し、企業が家庭での状況を必要な範囲で把握できることで、本人の小さな変化に早く気づき、早めの支援につなげることができます。

一方で、家族との連携は、本人のプライバシーや自己決定を大切にしながら進める必要があります。

企業が家庭の課題を抱え込むのではなく、本人の同意を前提に、家族や外部支援機関と役割を分担しながら支えること。それが、障害のある従業員が安心して働き続けられる職場づくりにつながります。

家族支援は、特別なことを一度に始める必要はありません。

まずは本人の声を聞き、家族の不安に耳を傾け、必要なときにつながれる先を少しずつ整えていくこと。その積み重ねが、本人にとっても、家族にとっても、企業にとっても、安心できる働き方の土台になっていきます。

なお、あしたパートナーズでは、障害のある従業員とそのご家族が、将来への不安を一人で抱え込まず、安心して働き続けられる環境づくりを、企業・法人の皆さまとともに進めています。

企業向けの「親なきあと支援プログラム」では、親なきあと問題に関するセミナー・ウェビナーの開催、オンラインコミュニティの利用優待、企業・法人の担当者からの相談対応などを通じて、従業員とご家族のこれからを支える仕組みづくりをサポートしています。

https://www.ashita-partners.com/service/support.html

障害者雇用における定着支援や、ご家族を含めた将来への備えに課題を感じている企業・法人の皆さまは、ぜひ一度ご相談ください。


執筆者

首藤 徹也(しゅどう てつや)
一般社団法人あしたパートナーズ 代表理事
株式会社あしたパートナーズ 代表取締役

ともに、“あした”を
つくる。

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