コラム
Column
2026.11.05 障害者雇用×親なきあと

障害者雇用担当者と相談支援専門員はどう連携する?

障害のある従業員の働き方が、最近少し不安定になっている。

遅刻や欠勤が増えた。

仕事中の不安が強くなった。

身だしなみや体調に変化が見られる。

本人に話を聞いてみると、仕事そのものではなく、家庭や生活の変化が影響しているように感じる。

こうしたとき、企業の障害者雇用担当者だけで対応できることには限界があります。

一方で、本人が障害福祉サービスを利用している場合などには、「相談支援専門員」が生活面の支援に関わっていることがあります。

では、企業と相談支援専門員はどのように連携すればよいのでしょうか。

重要なのは、企業が生活支援まで抱えることでも、相談支援専門員に職場の問題を任せることでもありません。

本人を中心に、それぞれが持っている情報や役割を必要な範囲でつなぐことです。

特に親の高齢化や親なきあとを考えると、企業と福祉がつながっていることは、本人の就労継続を支える一つの備えになります。

この記事では、障害者雇用担当者と相談支援専門員の役割の違いから、連携するタイミング、情報共有の考え方まで整理します。

1.相談支援専門員は、どんなことをしている?

相談支援専門員は、障害のある方の暮らしについて相談を受け、必要な障害福祉サービスや地域の支援との調整などに関わる専門職です。

計画相談支援では、本人の希望や生活状況を踏まえて「サービス等利用計画」を作成し、その後もモニタリングを行いながら、必要に応じて支援内容を見直します。

ただし、相談支援専門員が本人の生活上の問題をすべて解決するわけではありません。

必要に応じて、

障害福祉事業所。

行政。

医療機関。

就労支援機関。

地域の関係機関。

などとつながりながら、本人の暮らしを支える体制を考えていきます。

企業にとって重要なのは、

「相談支援専門員=何でも相談できる人」

と考えるのではなく、

「本人の生活を支えるネットワークの一員」

として理解することです。

2.なぜ障害者雇用で相談支援専門員との連携が必要になる?

仕事と生活は完全に切り離せないからです。

たとえば、

朝起きられなくなった。

服薬が不安定になった。

食生活が乱れている。

家族関係に変化があった。

親が入院した。

親の介護が必要になった。

住まいを変える必要が出てきた。

こうした生活上の変化が、遅刻や欠勤、体調不良、仕事への集中力の低下として職場に表れることがあります。

企業から見ると「勤務上の問題」に見えても、その背景に生活上の課題があることがあります。

反対に、相談支援専門員からは、

「最近、本人の生活リズムが崩れている」

と見えていても、それが職場でどのような変化として表れているかまでは分からないことがあります。

企業は「働いている本人」を見ています。

相談支援専門員は「暮らしている本人」を見ています。

両者の情報がつながることで、本人の状況をより立体的に捉えられることがあります。

3.どんなときに連携を考えればいい?

何か大きな問題が起きてから初めて連携する必要はありません。

たとえば、

遅刻や欠勤が増えてきた。

職場での様子が以前と変わった。

本人から生活上の困りごとの相談があった。

親の高齢化や入院によって生活環境が変化した。

通勤や服薬など、家族が担っていた支援が難しくなった。

本人だけでは整理しにくい生活課題が見えてきた。

といった場面は、連携を検討する一つのタイミングです。

ただし、

「何か問題が起きたから、相談支援専門員に連絡する」

だけでは、本人にとって突然の情報共有になってしまいます。

できれば平時から本人に、

「生活面で相談している人はいますか」

「仕事について困ったとき、支援者と会社が一緒に考えることについてどう思いますか」

と確認しておくことも大切です。

4.企業から相談支援専門員へ、何を伝えればいい?

本人の生活情報をすべて共有する必要はありません。

企業から伝えるのは、就労継続を考えるために必要な情報が中心です。

たとえば、

遅刻や欠勤が増えている。

以前より疲れている様子がある。

業務中の不安が強くなっている。

本人から家庭環境の変化について相談があった。

会社ではどのような配慮を行っているか。

どのような点について支援者と一緒に考えたいのか。

といった情報です。

ここで重要なのは、

「最近困っているので、何とかしてください」

と相談支援専門員へ対応を任せないことです。

企業としてできること。

生活面で確認してほしいこと。

本人が希望していること。

を整理したうえで連携することで、それぞれの役割が分かりやすくなります。

5.相談支援専門員から企業へ、何を聞けばいい?

企業側も、本人の生活状況をすべて聞く必要はありません。

就労継続に必要な範囲で、

現在どのような支援につながっているか。

最近、生活面で大きな変化があるか。

職場で配慮した方がよいことはあるか。

本人が不安を感じたとき、どのような対応が有効か。

今後、就労に影響する可能性のある変化があるか。

などを確認することが考えられます。

一方で、

家庭内の細かな事情。

本人の財産状況。

家族の病歴。

就労と関係のない福祉サービスの詳細。

など、必要性のない情報まで企業が把握する必要はありません。

「知ることができる情報」ではなく、

「本人が働き続けるために必要な情報」

という基準で考えることが大切です。

6.本人の同意は必要?

企業と相談支援専門員が本人について情報共有する場合には、本人の意思や個人情報への配慮が重要です。

本人に知らせないまま、

「会社と支援者が自分のことを話していた」

という状態になれば、本人との信頼関係を損なう可能性があります。

そのため、

なぜ連携したいのか。

どのような情報を共有したいのか。

何のために使うのか。

を本人に分かりやすく説明することが大切です。

たとえば、

「最近、朝の通勤が大変そうなので、生活の支援をしている方とも一緒に考えてみませんか」

と本人に確認する方法があります。

本人を抜きにして企業と福祉が本人の将来を決めるのではなく、本人自身も支援チームの一員として考えることが重要です。

7.親御さんを交えた方がいい?

本人の希望や状況によっては、家族を交えて話し合うこともあります。

特に、親御さんがこれまで、

通勤の準備。

服薬。

生活リズム。

会社との連絡。

本人の相談相手。

などを担ってきた場合には、親から得られる情報が役立つことがあります。

一方で、

「障害のある従業員について話すなら、まず親に確認する」

という形を当然にしないことも大切です。

成人した従業員であれば、まず中心にいるのは本人です。

親の高齢化や親なきあとを考えればなおさら、

本人 → 親 → 会社

という連絡経路だけではなく、

本人 → 会社

本人 → 支援者

会社 ↔ 支援者

という関係も、本人の意思を尊重しながらつくっていくことが重要になります。

8.相談支援専門員につながっていない場合は?

障害のある従業員すべてに相談支援専門員がいるわけではありません。

障害福祉サービスを利用していない方もいます。

その場合でも、企業が生活支援をすべて担う必要はありません。

本人の状況によっては、

障害者就業・生活支援センター。

自治体の障害福祉相談窓口。

基幹相談支援センター。

就労定着支援事業所。

医療機関。

など、別の相談先が考えられます。

大切なのは、

「相談支援専門員がいないから、会社と家族だけで対応する」

と考えないことです。

本人の地域にどのような相談先があるのかを確認し、必要に応じて本人へ情報提供することも企業にできる対応の一つです。

9.親なきあとを考えると、企業と福祉の連携はどう変わる?

親御さんが元気なうちは、

本人。

家族。

企業。

という関係だけでも、日々の就労が成り立っていることがあります。

しかし、その親御さんが高齢になり、これまで担っていた支援が難しくなると、状況が変わります。

たとえば、親が毎朝本人を起こしていたとします。

親が入院した結果、本人の遅刻が増えた。

このとき会社が、

「時間どおり出勤してください」

と伝えるだけでは解決しないかもしれません。

必要なのは、

本人自身でできる方法を考える。

生活支援について相談する。

福祉サービスの利用を検討する。

企業では勤務時間などの配慮を検討する。

といった複数の対応です。

親が担っていたことを、そのまま会社が引き継ぐのでも、福祉がすべて引き継ぐのでもありません。

本人のできることを増やしながら、必要な部分を企業や福祉、地域で支えていく。

親なきあとを見据えた連携では、この視点が重要になります。

10.連携のゴールは「情報共有」ではない

企業と相談支援専門員が連携すると、

「定期的に情報共有会議をしましょう」

という話になることがあります。

もちろん、必要な情報を共有することは重要です。

しかし、連携の目的は会議をすることではありません。

本人が安定して働ける。

生活上の変化があっても相談できる。

企業だけで抱え込まない。

福祉だけでも抱え込まない。

家族だけにも頼らない。

そして本人自身が、自分の暮らしや働き方について選べる。

その状態をつくることが目的です。

必要なときにつながれる関係ができていれば、常に頻繁な情報共有をする必要がない場合もあります。

本人を中心に、それぞれが自分の役割を果たしながら、必要なときにつながる。

それが、企業と福祉の連携の基本です。

よくある質問(FAQ)

Q1.障害者雇用担当者から相談支援専門員へ直接連絡してもよいですか?

本人について情報共有する場合には、本人の意思や個人情報への配慮が必要です。

まず本人に連携の目的を説明し、どのような情報を共有するのかを確認したうえで進めることが大切です。

Q2.相談支援専門員がいれば、生活上の問題は任せてよいですか?

相談支援専門員が本人の生活上の問題をすべて直接解決するわけではありません。

本人の状況を整理しながら、必要に応じて障害福祉事業所や行政、医療機関などとの調整を行います。

企業も就労の場でできる対応を考え、それぞれの役割を分担することが重要です。

Q3.親御さんとの連携はやめた方がいいのでしょうか?

その必要はありません。

本人が希望しており、親御さんとの連携が就労継続に役立っている場合もあります。

ただし、親だけが唯一の連絡先・相談先にならないよう、本人や外部支援者との関係も少しずつつくっておくことが、親なきあとへの備えになります。

Q4.企業はどこまで生活面に関わるべきですか?

企業が本人の私生活全体を支援する必要はありません。

一方で、生活上の変化が就労へ影響している場合には、本人と状況を確認し、職場でできる配慮を考えたり、必要な外部支援につないだりすることができます。

企業でできることと、外部の支援につなぐことを分けて考えることが大切です。

まとめ|「会社と家族」だけから、「本人を中心とした支援チーム」へ

障害者雇用では、本人を支える家族と企業が連絡を取り合うことで、安定した就労が支えられていることがあります。

その関係は大切です。

一方で、親御さんが高齢になったり、入院したり、これまでと同じように本人を支えられなくなったりする可能性があります。

そのとき、

「家族に連絡がつかないので、会社では対応できない」

という状態にならないために、平時から福祉とのつながりを考えておくことが重要です。

企業は働く場を支える。

相談支援専門員は暮らしを整理し、必要な支援へつなぐ。

家族は家族として本人と関わる。

そして、その中心に本人がいる。

誰か一人がすべてを担うのではなく、必要な人がつながり、それぞれの役割を果たす。

企業と相談支援専門員の連携は、親なきあとにも本人が働き続けられる環境をつくるための一つの備えです。

障害のある従業員の「親なきあと」を、社内で考えるために

「生活上の課題が就労に影響したとき、どこまで企業が対応すればよいのかわからない」

「家族との連携はあるが、地域の支援者との連携体制まではつくれていない」

「親の高齢化を見据えて、障害のある従業員への支援体制を整理したい」

こうした課題は、担当者個人の経験だけに任せるのではなく、企業として基本的な考え方や対応方針を共有しておくことが大切です。

あしたパートナーズでは、企業・障害福祉事業者向けに、「親なきあと」問題の全体像や相談事例、障害福祉制度、企業として意識しておきたい対応、地域の支援者・専門家との連携について学ぶ「親なきあと研修」を実施しています。

障害のある従業員とそのご家族を企業だけで支えるのではなく、必要な支援へつなげられる体制を考える。そのための社内の共通認識づくりとしてご活用ください。

親なきあと研修について詳しくはこちら


執筆者

首藤 徹也(しゅどう てつや)
一般社団法人あしたパートナーズ 代表理事

ともに、“あした”を
つくる。

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