ヤングケアラー・きょうだい支援|孤立感を和らげる相談先とピアサポート
障害や病気のある兄弟姉妹がいる家庭では、子どもや若者が、日常生活のなかでさまざまな役割を担っていることがあります。
家事や見守り、兄弟姉妹の世話などを担うヤングケアラーや、障害や病気のある兄弟姉妹を持つ「きょうだい」のなかには、自分の気持ちを家族や友人に話せず、孤立感を抱えている方もいます。
一方で、障害や病気のある兄弟姉妹を持つすべての方が、同じ経験や悩みを抱えているわけではありません。
大切なのは、「きょうだいだから」「ヤングケアラーだから」と一括りにするのではなく、その人が現在どのようなことに困り、何を負担に感じているのかに目を向けることです。
この記事では、ヤングケアラーやきょうだいが抱えやすい悩み、公的な相談先、同じ立場の人とつながるピアサポートについて解説します。
「きょうだい児」と「ヤングケアラー」とは
「きょうだい児」と「ヤングケアラー」は、似た場面で使われることがありますが、意味は同じではありません。
まずは、それぞれの言葉がどのような状況を表しているのかを確認しましょう。
「きょうだい児」が置かれやすい状況
「きょうだい児」とは、一般に、障害や病気のある兄弟姉妹を持つ子どもを指す言葉です。
成人した方も含めて、「きょうだい」「きょうだい当事者」と呼ばれることもあります。
家庭によって状況は異なりますが、親が障害や病気のある子の通院、療育、日常生活の支援に多くの時間を使うことで、きょうだいが自分のことを後回しにされたように感じることがあります。
また、親を困らせないように「良い子」でいようとしたり、自分の悩みや希望を話さずに我慢したりすることもあります。
将来について、
「親がいなくなったら、自分が兄弟姉妹を支えなければならないのではないか」
と不安を抱く方もいます。
ただし、障害や病気のある兄弟姉妹を持つこと自体が、必ずしも負担や不幸につながるわけではありません。家庭環境や兄弟姉妹との関係、利用している支援によって、経験や受け止め方は一人ひとり異なります。
「ヤングケアラー」が担う家庭内の役割
ヤングケアラーとは、本来は大人が担うと考えられる家事や家族の世話などを、日常的に行っている子どもや若者を指します。
例えば、次のような役割があります。
- 障害や病気のある兄弟姉妹の見守り
- 食事、着替え、入浴などの手伝い
- 通院や外出への付き添い
- 幼いきょうだいの世話
- 掃除、洗濯、食事の準備
- 日本語を話すことが難しい家族の通訳
- 家計を支えるための仕事
- 病気や障害のある家族の精神的な支え
家族の手伝いをすること自体が、直ちに問題になるわけではありません。
一方で、年齢に見合わないほど重い役割を担い、学校生活、友人関係、睡眠、心身の健康に影響が生じている場合には、本人への支援が必要です。
障害のある兄弟姉妹を持つ「きょうだい」が、同時にヤングケアラーである場合もありますが、両者は必ずしも同じではありません。
きょうだいが抱えやすい悩み|家族のなかで感じる孤立感
障害や病気のある兄弟姉妹を持つ「きょうだい」は、家庭という身近な場所で、複雑な気持ちを抱えることがあります。
家族を大切に思いながらも、寂しさや負担を感じることがあります。その両方の気持ちを持つことは、不自然なことではありません。
自分のことを後回しにされたように感じる寂しさ
障害や病気のある子に、通院や日常生活の支援が必要な場合、親の時間や関心がそちらに集中することがあります。
その結果、
「自分の話を聞いてもらえない」
「自分は後回しにされている」
と感じることがあります。
親は子どもたちを同じように大切に思っていても、きょうだい側には寂しさが残る場合があります。
また、親が大変そうにしている姿を見て、自分の希望や不満を口にすることをためらい、我慢が当たり前になることもあります。
「良い子でいなければ」というプレッシャー
親にこれ以上心配をかけたくないという思いから、無意識に「手のかからない子」でいようとすることがあります。
学校で困ったことがあっても話さない、体調が悪くても我慢する、自分の希望を言わずに親の判断に合わせることもあるでしょう。
周囲からは、しっかりした子、優しい子と評価される一方で、本人の内側には疲れや不安が積み重なっている場合があります。
進学・就職・結婚など将来への不安
きょうだいは、進学、就職、結婚などの人生の節目で、家族のことを意識することがあります。
「実家から離れてもよいのだろうか」
「親が高齢になったら、自分が戻らなければならないのではないか」
「結婚相手に、兄弟姉妹の障害をどう伝えればよいのか」
といった悩みが生じることもあります。
将来への不安から、自分の希望を諦めたり、選択肢を狭めたりする方もいます。
しかし、障害や病気のある兄弟姉妹がいるからといって、きょうだいが自分の人生を後回しにしなければならないわけではありません。
「親なきあと」への責任感
きょうだいのなかには、親から明確に頼まれていなくても、
「親がいなくなったら、自分が面倒を見ることになる」
と考えている方がいます。
「親なきあと」には、住まい、日常生活の支援、お金の管理、福祉サービスの手続きなど、さまざまな課題があります。
これらを一人で考えようとすれば、精神的な負担は大きくなります。
しかし、親が担ってきた役割を、きょうだい一人がすべて引き継ぐ必要はありません。
日常生活は福祉サービス、金銭管理は権利擁護の仕組み、手続きの調整は相談支援専門員など、役割を分けて考えることができます。
一人で抱え込まない|相談できる公的な窓口
家庭内の役割や将来への不安について、一人で抱え込む必要はありません。
近年は、ヤングケアラーや子ども・若者、障害のある方の家族を支援する相談窓口が各地域に設けられています。
相談したからといって、すぐに家族から離されたり、望んでいない支援を進められたりするとは限りません。
まずは、現在困っていることや、自分の気持ちを話すところから始められます。
自治体のヤングケアラー相談窓口
都道府県や市区町村によっては、ヤングケアラー本人や家族、学校関係者などから相談を受け付ける窓口を設置しています。
電話、メール、LINE、オンライン面談など、複数の方法で相談できる自治体もあります。
相談内容に応じて、次のような支援につながることがあります。
- 家事や生活を支える福祉サービス
- 障害のある家族への相談支援
- 学校での配慮
- 子どもや若者の居場所
- 経済的な支援制度
- 医療や福祉の関係機関
住んでいる自治体のウェブサイトで、「ヤングケアラー 相談」などの言葉を使って探すことができます。
子ども・若者のための総合相談窓口
ヤングケアラー専用の窓口が見つからない場合は、子どもや若者を対象とした総合相談窓口へ相談する方法があります。
地域によって名称は異なりますが、子ども家庭センター、児童相談所、子ども・若者総合相談センターなどがあります。
家庭の事情、学校生活、進路、人間関係、心身の不調など、相談内容が一つに整理できていなくても構いません。
「どこへ相談すればよいか分からない」という場合の入口となる窓口です。
学校の先生・スクールカウンセラー・養護教諭
学生の場合は、学校の先生、スクールカウンセラー、養護教諭も身近な相談先です。
家庭での役割によって、遅刻や欠席が増えている、勉強の時間を確保できない、睡眠不足が続いているといった場合には、学校生活への配慮を相談できることがあります。
いきなり家庭の事情をすべて説明することが難しければ、
「家のことで疲れている」
「家族の世話で、勉強する時間がない」
といった、現在困っていることから話しても構いません。
障害福祉の相談支援事業所や自治体窓口
障害のある兄弟姉妹の暮らしや福祉サービスについて相談したい場合には、自治体の障害福祉窓口、相談支援事業所、基幹相談支援センターなどがあります。
相談支援専門員は、障害のある本人の希望や生活状況を確認しながら、利用できる福祉サービスや支援体制を一緒に考えます。
「親やきょうだいだけで支え続けることが難しい」
「将来、家族が支えられなくなったときの生活を考えたい」
といった相談もできます。
「自分だけではない」と思えるピアサポート
公的な相談窓口に加えて、同じような経験を持つ人とつながるピアサポートもあります。
ピアサポートとは、似た経験や立場を持つ人同士が、気持ちや経験を分かち合い、支え合う取り組みです。
同じ立場だからこそ話しやすいことや、細かく説明しなくても分かり合えることがあります。
ただし、当事者会や交流の場が、すべての方に合うとは限りません。無理に話す必要はなく、自分にとって安心できる距離や参加方法を選ぶことが大切です。
オンラインコミュニティ
近くに当事者会がない場合や、外出が難しい場合には、オンラインコミュニティを利用する方法があります。
名前や顔を出さずに参加できる場では、家族や友人には話しづらい悩みを書き込めることもあります。
他の人の体験談を読むだけでも、
「同じように感じている人がいる」
「家族との関わり方には、いろいろな形がある」
と知ることができます。
ただし、インターネット上の情報がすべて正確とは限りません。制度や法律、医療に関する内容は、自治体や公的機関の情報も確認しましょう。
「きょうだい会」や当事者会
各地域には、障害や病気のある兄弟姉妹を持つ人が集まる「きょうだい会」があります。
子どもを対象とした活動だけでなく、成人したきょうだい向けの交流会や勉強会、オンラインイベントもあります。
話題としては、親との関係、兄弟姉妹との距離、就職や結婚、親なきあと、相続、金銭管理などがあります。
自分の体験を話すことを強制されず、他の人の話を聞くだけで参加できる場もあります。
LINEやチャットを利用した相談
電話や対面では緊張してしまう方には、LINEやチャットを使った相談が利用しやすい場合があります。
文章にすることで、自分の気持ちを落ち着いて整理できることもあります。
ヤングケアラーや子ども・若者、家族を対象とした団体のなかには、無料のチャット相談を行っているところがあります。
利用時間や年齢、相談内容は団体によって異なるため、事前に確認しましょう。
「親なきあと」の不安を整理する
きょうだいが抱える悩みのなかには、現在の家庭内の役割だけでなく、「親なきあと」の生活への不安もあります。
親が障害のある本人の生活を支えている場合、親が高齢になった後に、住まい、お金、福祉サービス、医療、行政手続きなどを誰が担うのかという課題が生じます。
しかし、これらをきょうだい一人が引き継ぐ必要はありません。
まずは、親が現在担っている役割を整理しましょう。
- 食事や掃除などの日常生活の支援
- 通院への付き添い
- 福祉サービス事業所との連絡
- 障害年金や各種手当の手続き
- 預貯金の管理
- 住まいの維持管理
- 緊急時の対応
そのうえで、本人ができること、福祉サービスへ任せること、制度で支えること、家族が無理なく関われることに分けて考えます。
親なきあとの準備は、きょうだいに将来の役割を決めるためのものではありません。
障害のある本人や家族の誰か一人に、負担が集中しない仕組みをつくるためのものです。
家族の状況を整理する「親なきあと個別相談」
「親なきあと」には、住まい、生活、福祉サービス、お金、相続、財産管理、きょうだいの関わり方など、複数の課題が関係します。
そのため、
「何から考えればよいか分からない」
「親ときょうだいの考えが違い、話し合いが進まない」
というご家族もいます。
あしたパートナーズの「親なきあと個別相談」では、ご本人とご家族の現在の暮らしや将来への不安を伺いながら、考えるべき課題を一つずつ整理します。
きょうだいがいる場合も、将来の支援を担うことを前提にせず、きょうだい自身の生活や気持ちを踏まえた関わり方を考えます。
「何を相談すればよいか分からない」という段階からでも、親が現在担っている役割を確認するところから始められます。
きょうだい支援やヤングケアラーに関するよくある質問
家族に本音を言えません。役割に疲れたときはどうすればよいですか?
家族に直接話すことが難しい場合は、家族以外の人へ話しても構いません。
学校の先生、スクールカウンセラー、自治体の相談窓口、オンライン相談など、自分が話しやすい場所を選びましょう。
最初からすべてを説明する必要はありません。
「家のことで疲れている」
「家族の世話で自分の時間が取れない」
といった、現在感じていることから話すことができます。
18歳を過ぎた元ヤングケアラーでも相談できますか?
18歳以上の若者や、過去に家族のケアを担っていた方の相談を受け付けている自治体や支援団体があります。
現在は家族の世話をしていなくても、過去の経験が進学、就職、人間関係、心身の状態に影響している場合があります。
「若者ケアラー」「元ヤングケアラー」などの言葉で相談先を探してみましょう。
同じ立場のきょうだいとつながるには、どのような方法がありますか?
地域のきょうだい会、当事者団体、オンラインコミュニティ、交流イベントなどがあります。
自治体、社会福祉協議会、障害福祉事業所などが、地域の団体について情報を持っている場合もあります。
参加前には、対象年齢、開催方法、個人情報や守秘に関するルールを確認すると安心です。
自分がヤングケアラーか分かりません。それでも相談してよいですか?
自分がヤングケアラーに当てはまるか分からなくても、困っていることがあれば相談できます。
言葉の定義に当てはまるかどうかよりも、家庭で担っている役割によって、自分の生活や心身にどのような影響が生じているかが大切です。
学校へ行けない、睡眠が取れない、友人と過ごす時間がない、常に不安を感じるといった場合には、その状況を相談先へ伝えてみましょう。
まとめ|安心して話せる場所を、自分のペースで見つける
ヤングケアラーや、障害・病気のある兄弟姉妹を持つ「きょうだい」のなかには、家庭内の役割や将来への不安を誰にも話せず、孤立感を抱えている方がいます。
家族を大切に思っていても、疲れたり、負担を感じたりすることがあります。
自分の時間がほしい、家族から離れて暮らしたい、自分の将来を優先したいと感じることも、自然なことです。
相談先には、自治体のヤングケアラー窓口、子ども・若者の総合相談窓口、学校のスクールカウンセラー、障害福祉の相談支援事業所などがあります。
また、同じような経験を持つ人とつながる「きょうだい会」や、オンラインコミュニティなどのピアサポートもあります。
無理に参加したり、自分の気持ちをすべて話したりする必要はありません。
まずは情報を見る、他の人の体験を読む、匿名の相談を利用するといった方法でも構いません。
「親なきあと」が不安な場合も、きょうだいが将来の支援をすべて担う必要はありません。
障害のある本人の希望を大切にしながら、福祉サービスや相談支援、財産管理の仕組みを組み合わせ、家族だけに負担が集中しない体制を考えることができます。
自分の悩みを誰かに話すことは、家族を見放すことではありません。
自分自身の生活や気持ちを守りながら、家族との無理のない関わり方を見つけるための一歩です。
なお、あしたパートナーズでは、障害のある方とそのご家族の「親なきあと」に関する個別相談を行っています。
個別相談では、ご家族の構成や現在の暮らし、所有する財産、将来感じている不安などを伺いながら、住まい、生活や就労、お金、相続、きょうだいの関わり方といった課題を一つずつ整理します。
きょうだいがいる場合も、将来の支援を担うことを前提にするのではなく、それぞれの生活や気持ちを踏まえ、家族にとって無理のない備えを考えていきます。
「何から考えればよいか分からない」
「家族だけでは話し合いが進まない」
という段階でも構いません。
まずは、現在の暮らしと、親が担っている役割を整理するところから始めていきます。
執筆者
首藤 徹也(しゅどう てつや)
一般社団法人あしたパートナーズ 代表理事
株式会社あしたパートナーズ 代表取締役
