コラム
Column
2026.09.14 暮らし・相続×親なきあと

障害福祉サービスにつながっていれば「親なきあと」は安心?

「うちの子は障害福祉サービスを利用しているから、親なきあとも何とかなるのではないか」

生活介護や就労継続支援、共同生活援助(グループホーム)などを利用しているご家庭では、このように考えることもあるかもしれません。

本人の暮らしを支えるうえで、障害福祉サービスはとても大切な存在です。

相談支援専門員がいて、日中に通う事業所があり、必要に応じて居宅介護(ホームヘルプ)や短期入所(ショートステイ)などを利用している。

こうした支援につながっていることは、親なきあとを考えるうえでも大きな土台になります。

しかし、「障害福祉サービスを利用していること」と「親が支えられなくなっても本人の暮らしが続くこと」は、必ずしも同じではありません。

親が日常的に担っていることのなかには、現在利用している障害福祉サービスだけでは見えにくいものもあるからです。

この記事では、障害福祉サービスにつながっている家庭だからこそ、親が元気なうちに確認しておきたい「親なきあと」の準備について考えます。

1.障害福祉サービスを利用していれば、親なきあとも安心?

障害福祉サービスにつながっていることは大切な備えですが、それだけですべての暮らしが支えられるとは限りません。

障害福祉サービスには、本人の状況や生活に応じてさまざまなものがあります。

たとえば、

  • 生活介護
  • 就労継続支援A型・B型
  • 就労移行支援
  • 共同生活援助(グループホーム)
  • 居宅介護(ホームヘルプ)
  • 短期入所(ショートステイ)

などがあります。

また、計画相談支援を利用している場合には、相談支援専門員が本人の希望や生活状況を踏まえ、サービス等利用計画の作成やモニタリングなどを行います。

こうした制度や支援は、本人の地域生活を支える重要な仕組みです。

一方、本人の一日は障害福祉サービスを利用している時間だけでできているわけではありません。

「サービスがあるか」だけでなく、「本人の暮らし全体がどう成り立っているか」まで見ることが、親なあとを考えるうえでは大切です。

2.障害福祉サービスの「外側」で、親が担っていることは?

サービスを利用していても、その前後や日常生活では家族が多くの役割を担っていることがあります。

たとえば、本人が平日に生活介護を利用しているとします。

事業所で過ごしている時間は支援者がいます。

では、朝起きてから出発するまでや、帰宅したあと、休日はどうでしょうか。

親が、

朝起こす。

着替えを促す。

薬を準備する。

送迎に間に合うよう声をかける。

事業所からの連絡帳を確認する。

夕食を準備する。

本人の話を聞く。

翌日の予定を伝える。

といったことを担っているかもしれません。

就労継続支援A型・B型や一般企業で働いている方でも同様です。

仕事や通所そのものは本人ができていても、その生活を安定して続けるための部分を家族が支えている場合があります。

こうした家族の日常的な関わりは、前の記事で紹介した「見えない支援」の一つです。

▶「親が日々担っている『見えない支援』とは?親なきあとに向けた暮らしの整理」

3.相談支援専門員がいれば、全部相談できる?

相談支援専門員は大切な相談先ですが、本人の暮らしのすべてを一人で担う人ではありません。

計画相談支援では、本人の希望や生活状況などを踏まえてサービス等利用計画を作成し、障害福祉サービスの利用状況などを確認するモニタリングが行われます。

親なきあとを考えるうえでも、相談支援専門員は重要な存在になり得ます。

たとえば、

「最近、親自身の体調に不安がある」

「今後、本人の住まいを考えたい」

「親が入院した場合にどうすればよいか心配」

といったことを相談することも考えられます。

ただし、相談支援専門員が、本人の金銭管理、相続、医療、日々の家事、緊急時の受入れなどをすべて直接担うわけではありません。

必要に応じて、障害福祉事業者、行政、医療機関、社会福祉協議会、法律やお金の専門家など、それぞれの役割を持つ人や機関とつながっていくことが必要になります。

4.グループホームに入居すれば、親なきあとも安心?

共同生活援助(グループホーム)は重要な住まいの選択肢ですが、入居だけで親なきあとのすべてが解決するわけではありません。

グループホームでは、主として夜間に、相談や日常生活上の援助などが提供されます。

本人にとって安心して暮らせる住まいがあることは、とても大きなことです。

一方、住まいが決まったあとにも、

日中はどこで過ごすのか。

通院や服薬はどうするのか。

障害年金や預貯金をどう管理するのか。

契約や行政手続きはどうするのか。

休日をどう過ごすのか。

困ったときに誰へ相談するのか。

本人の意思を誰がどのように確認していくのか。

といった課題があります。

つまり、親なきあとに必要なのは「住む場所を決めること」だけではなく、「その場所で本人の暮らしが続いていくこと」です。

グループホームを検討するときにも、入居そのものをゴールにするのではなく、本人がそこでどのような暮らしをしたいのかまで考えることが大切です。

5.親が急に入院したら、今の障害福祉サービスだけで対応できる?

現在のサービス利用状況によっては、急な変化にそのまま対応できない場合があります。

たとえば、普段は親と同居しながら生活介護へ通っている方の場合、親が突然入院すると、

食事はどうするのか。

夜間は誰がいるのか。

服薬はどうするのか。

朝の準備はどうするのか。

休日はどうするのか。

という問題が一度に出てくることがあります。

短期入所(ショートステイ)が選択肢になる場合もありますが、必要になったときに必ずすぐ利用できるとは限りません。

また、本人にとって初めての場所で急に生活することが、大きな負担になる場合もあります。

地域によっては、障害のある方の重度化・高齢化や「親なきあと」を見据え、緊急時の相談や受入れなどの機能を地域で整える地域生活支援拠点等の取り組みがあります。

「緊急時にはどうすればいいか」を、相談支援専門員や市区町村の障害福祉担当窓口などに事前に確認しておくことも大切です。

親の急な入院については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

▶「親が突然入院したら、障害のある子の暮らしはどうなる?今から確認しておきたいこと」

6.サービス等利用計画に「親なきあと」の視点は入っている?

現在利用しているサービスだけでなく、本人がこれからどのように暮らしていきたいのかを考えることも大切です。

計画相談支援では、サービス等利用計画を作成し、その後もモニタリングを通じて本人の状況やサービス利用について確認していきます。

障害福祉事業所でも、本人の意向や状況などを踏まえ、個別支援計画が作成されます。

こうした機会に、

「親が高齢になってきた」

「今は親が金銭管理をしている」

「本人は将来もこの地域で暮らしたいと言っている」

「親がいないと通院が難しい」

「本人が困ったときに自分から相談することが難しい」

といった、本人の暮らしを支えている家族の状況について共有しておくことも一つの方法です。

親なきあとは、親が亡くなった瞬間から突然始まるものではありません。

親の高齢化や病気などによって、それまでと同じように本人を支えることが難しくなる可能性もあります。

だからこそ、親が元気なうちから、本人の将来の暮らしについて支援者と話していくことが大切です。

7.お金や財産管理も、障害福祉サービスで支えてもらえる?

障害福祉サービスだけでは対応できない領域もあります。

たとえば、親が本人の障害年金や預貯金を管理している場合、

「親が管理できなくなったらどうするのか」

を考える必要があります。

本人の状況によっては、社会福祉協議会が実施する日常生活自立支援事業や、家庭裁判所が関与する成年後見制度などが関係する場合があります。

また、親の財産を本人へどのように残すかという問題では、相続、遺言、信託、生命保険などを検討することもあります。

こうした領域については、相談支援専門員や障害福祉事業者だけで完結するものではありません。

必要に応じて、社会福祉協議会や弁護士、司法書士、税理士など、専門性を持つ人につないでいくことが必要になります。

暮らしと福祉、お金や相続を別々に考えすぎないことも、親なきあとを考えるうえで大切な視点です。

8.親が元気なうちに、何を確認しておけばいい?

新しいサービスをたくさん増やすことより、まず「今の暮らし」を確認することから始めてみましょう。

たとえば、次の5つです。

1.現在利用している障害福祉サービス

生活介護、就労継続支援、居宅介護、共同生活援助など、現在どのようなサービスを利用しているのか。

2.サービスの外で親が担っていること

食事、服薬、金銭管理、通院、行政手続き、事業所との連絡など、親が日常的に何をしているのか。

3.本人が自分でできること

本人自身でできていることや、少し支援があればできることは何か。

4.親が支えられなくなったときの相談先

相談支援専門員、市区町村の障害福祉担当窓口、基幹相談支援センターなど、困ったときに相談できる場所を知っているか。

5.本人がこれから望む暮らし

どこで暮らしたいのか。今の日中活動や仕事を続けたいのか。誰とのつながりを大切にしたいのか。

制度やサービスを先に決めるのではなく、本人がどのような暮らしを続けたいのかを中心に考えることが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q1.相談支援専門員がいない場合、どこへ相談すればいいですか?

市区町村の障害福祉担当窓口や地域の相談支援事業所、基幹相談支援センターなどに相談する方法があります。

地域によって相談体制や名称などが異なるため、お住まいの自治体で確認してください。

Q2.グループホームに入居していても、親なきあとの準備は必要ですか?

住まいが確保されていても、金銭管理、医療、日中活動、意思決定、行政手続き、人とのつながりなど、暮らしにはさまざまな要素があります。

「どこに住むか」だけでなく、「その場所でどのように暮らし続けるか」を確認しておくことが大切です。

Q3.短期入所を利用したことがありません。親の緊急時に利用できますか?

短期入所は、介護を行う家族の病気などの場合にも利用される障害福祉サービスですが、利用には手続きが必要で、事業所の受入れ状況などにも左右されます。

緊急時にどのような選択肢があるのか、事前に相談支援専門員や自治体へ確認しておくとよいでしょう。

Q4.障害福祉サービスを利用していない場合はどうすればいいですか?

まずは市区町村の障害福祉担当窓口や地域の相談支援機関などへ相談する方法があります。

すぐにサービスを利用するかどうかとは別に、「困ったときにどこへ相談できるか」を知っておくことも親なきあとへの備えになります。

まとめ|「サービスにつながる」から、「暮らしがつながる」へ

障害福祉サービスにつながっていることは、本人の現在と将来の暮らしを考えるうえで大切なことです。

しかし、

生活介護へ通っている。

就労継続支援を利用している。

相談支援専門員がいる。

グループホームに入居している。

それだけで、親なきあとの準備がすべて終わるわけではありません。

本人の暮らしには、住まい、生活・就労、お金、人とのつながりなど、さまざまな要素があります。

そして、その間をつなぐように、今は親が担っていることもあります。

だからこそ、

「どのサービスを利用しているか」だけではなく、「本人の暮らし全体を、今は誰がどのように支えているのか」まで見てみる。

そこから、本人自身ができること、障害福祉で支えられること、地域や専門家につなぐこと、家族が担うことを整理していく。

目指したいのは、親の役割を誰か一人に引き継ぐことではありません。

本人を中心に、必要な人や支援がつながり、家族だけで抱え込まなくても暮らしが続いていくこと。

それも、親なきあとに向けた準備の一つではないでしょうか。

「障害福祉サービスは利用しているけれど、親なきあとに何が足りないのか分からない」「今の支援体制を一度整理しておきたい」というときは、あしたパートナーズの「親なきあと相談」もご利用いただけます。

住まい、生活・就労、お金、人とのつながりなど、ご家族ごとに異なる状況を伺いながら、これからの暮らしについて一緒に整理していきます。

→親なきあと相談について詳しく見る


執筆者

首藤 徹也(しゅどう てつや)
一般社団法人あしたパートナーズ 代表理事
株式会社あしたパートナーズ 代表取締役

ともに、“あした”を
つくる。

お問い合わせ

あしたパートナーズへのお問い合わせ、相談、セミナーへの登壇依頼などは
お問い合わせフォームよりご連絡ください。